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脱ぎ捨てられる昨日

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うわごと

よくあるテレビドラマ、閉じこめられた8人(何人でもいいけれど)、巻き起こる殺人事件。
8人の中で、背格好の似た人物におなじかっこうをさせて犯人なりなんなりがすりかえてしまう、というようなトリック。のようなものがあったとして、そんなにかんたんに見間違えるのかしら、いくらなんでも違う人なのに、8人ぐらいだったら背格好って結構違うし区別はつくのじゃないのかしら、と思ってしまうわたしなのだけれど、先日部屋で寒さに耐えかねた恋人が、わたしの帽子を被っているのを見て、ふいにびっくりするほど自分に見えて、そういえばそのとき彼がしていためがねのフレームのかたちもちょっと似ていたのだけど、性別も顔だちも異なるのにまさか自分に見えるなんてと驚いて、「だれかとだれかが似ている」ことは随分と簡単なことによると思った。だれかが自分に見えるって本当に気持ちの悪いことで、そのハードルの意外な低さに脅えてしまった。

友人男女二人が駅の階段を降りてくるのを、おかしいな、なんだかまるで恋人同士のようだと思って随分ふしぎな気持ちで見ているある日の記憶。
二人とも以前から知っていて、そろっておなじ空間にいたことも何度も何度もあって、女の子の実際の恋人の顏も知っているのに、なぜか階段を降りてくる二人は「二人組」としてしっくりきて、しっくりすると思った瞬間から、ぶわっと、あれもこれも共通している、リンクしている、とどんどん思いはじめるて、たしかにあったはずの境界がどんどん更新されていく感じ、どんどん奇妙な気持ちになっていった。

ところでわたしは友達の顏を覚えていない。

たとえば小学校のころを思い出す。みんなうんと子供の顏をしていたはずだった、でもどうしてか、十歳かそこらの子供たちがたくさんいてそのすべてが他人だったころを思い起こすことができない。イメージの中で、その骨格が、その肌が、そのかたちはもううんと違うものになってしまっている。もう何年も何年も卒業アルバムを開いてなどいないけれども、もうあのころの風景でしかなくなってしまった彼らが、うんと当たり前の子供の顏で写真に写っていたらどうしようと少し脅える。
そんなわけなかったじゃない、あなたたちはそんなわけがなかったじゃないか、ときっと思ってしまうだろう。
その肉体、その背丈、その重量。
そんなことは本当にあったのだったかな。みんな本当にいたのだったか。いたのだとしても、一枚の紙みたいになくなってしまったのではないのか。わたしが勝手に見たつもりになっているだけなのではないか。本当は、あのころのみんなに本当は何があって、わたしは彼らに何をして、何をされて、何をしないで、喜びは何で悲しみはどんなで、どうして一緒にいたのだろう。

みなが方言だったはずだけれど、彼らが何をどうやってどのような態度と音程で話していたのか、思い出すことができない。

わたしはまだまだ、ものを選べない焦燥感の中で、服の着方も食事の仕方も見失ったままに、不必要な実験を繰り返しながら、ふとした一日に急に自分がどうしようもなく自分自身から見放されていた十代の自分を生きているような気持ちになって、慌てて2011年の自分のコスプレをし直すのを、繰り返しているような。という怠惰のうわごと。

近所の理容室のガラスごし、中にいつも年をとった柴犬がいて、おっとりと眠り、時折目をあけて、もの静かに外を眺めている。
客も主人もそれが当然のようで、犬もしっぽを振ったりしない。
犬の寝床はとてもあたたかく作ってある。

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