22歳ごろの夏 ある昼過ぎに
東京のどこかの駅で
券売機に千円を入れてから、
目的地までいくらのボタンを押せばいいか分からないことに気づいて
モタモタとだらしなく上の表を見て考えていると
斜め後ろ 近いところから
「どこ行きたいの」と声をかけられて
反射的に答えながら振り返ると
きれいな夏服を来た高校生の男の子が
わたしの肩のあたりからさっと券売機に長い手を伸ばして
ばしっ、とボタンのひとつを押して
そのまま自分は定期で改札を通って行ってしまった
あっという間に
駅の構内はガランとしていて
いくつも並ぶ券売機には他に誰もいなくて
券売機のピーピー音と、お釣りのジャラジャラ音がやけに響いて
出てくる切符を慌てて引っ張りながら
その夏服の一瞬の背中を見送るわたし
白い夏服が暗い静かな構内をくっきりと切り分けて
奇麗な肩だなあと思った
友達の日記で制服萌えの話してて思い出した
どんどん制服の子は遠くなっていく
22のころはまだもっと、うんと自分に近い存在に思えたけど
その残像と温度
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