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脱ぎ捨てられる昨日

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二十年の誤解




先日、昼すぎに新宿で立ち寄ったラーメン屋。

本当は別の鳥料理の店を目指していたのだけれど、さわぎがあったらしく、道ごと警察とやじ馬に封鎖されていて入れず、一本横の道で空いていた店に入ったのだった。

使い込んだ釜で麺を茹でているおばさんに、いつからやっているのかたずねると、「50年」とあっさりとこたえる。
おばさんの夫が打ったというびっくりするほど美味しい手打ち麺をすすっていると、「警察がそのあたりにきて騒ぎになってるの? ふーん。昔はしょっちゅう喧嘩だの人刺したの何ので、パトカーや救急車は毎日だったから、わたしなんかはいちいち、なんとも思わないね。そのぐらいで大騒ぎになるなんてね。今は静かになったよね」とおばさんが言う。「そのかわり最近はこのあたりは外国人に有名になっちゃってね。ガイドブック持っていろんな人が来るよ」
「言葉に困ったりしない?」と聞くと、「困っても覚えない」とおばさんは笑う。
うどん屋やラーメン屋ではたらく女性は、肌がつやつやしている印象がある。大量の蒸気をいつも浴びるからだろうか。おばさんも、みずみずしくハリのある肌をしていた。
店先にひょいと現れた小柄なおじさんに、おばさんがビールを持っていく。常連であるらしい。おじさんが頼んだギョウザを見ると、ひとつひとつが大きくパリっとしている。「それおいしそうだね?」と聞くと「もちろん」と言うので自分も頼むと、おじさんがビールを一本奢ってくれた。

もう何年も前、本当に何ひとつ知らなかった自分が、はじめて新宿を訪れたときには、既に都の方針でキャッチをはじめとしたいろんなことが禁止されていたようだった。街の人たちは「随分静かになった」と言っていた。ほんの少し前、城咲仁が大名行列のように歌舞伎町を練り歩いていたころの話や、それ以前、『新宿鮫』的なころの話をいくつか聞いたけど、既に遠く伝説めいて聞こえた。
最近ではキャバクラも一時期の盛り上がりが嘘のように、店側も客側もコストのかからないガールズバー等にシフトしているらしく、夜にふと通り過ぎた歌舞伎町は閑散としていた。もちろん、新宿には深い深い奥行きがあるだろうから、分からないことのほうがずっと多いけれど。

数日前、奈良で立ち寄った店に『シティーハンター』があったので、煮詰まった珈琲をなめながらぺらぺらと一巻をめくってみた。そうしてしばらく読み進めると、主人公サエバリョウがさくっと人を殺してしまい、そのことにあまりにも驚いて思わず声を出してしまった。冒頭の、サエバが女性に殺しの依頼を受けているシーンを読んでも「この依頼にはいろいろな誤解が重なっていて、その誤解をサエバが華麗に明らかにし、依頼者の殺人衝動を解消、カタルシスを迎えるのだろう」と呑気に思っていた。しかし、エピソードの後半で、サエバが陽気によく喋りながら、笑顔で、ゴルゴのようにさっくりと注文通りにターゲットを殺してしまったことには。

一人あぜんとしているところに、
「どうしたの?」と言われ、
「いや、シティーハンターが人を殺しちゃったんだよね」とこたえると
「……それが???」
誤解がとけるのは自分のほうでした。
実は読んだことも、アニメを観たこともなかった。しかし、ざっと二十年は勘違いしていました。「新宿のトラブル請負人」というから、難題も引き受ける私立探偵か何かだと思っていた。
シティーハンターって暗殺者だったのか。
個人的にはシャーロック・ホームズが探偵というのは勘違いです、暗殺者ですよ、と言われるほどのギャップだけど、こういう驚きは自分本位のことでしかないので、他人には「だから?」としかならないだろう…。キャラクターイメージや世界観が自分の中で華やかで明るいものだったので、思ったよりど真ん中に「裏社会もの」なことに驚いてしまった。依頼されて殺すっていうストレートさにも。なんとなく、最後にはサエバが、「あとは警察にまかせて行こう」って言いそうなイメージがあったのだ。

「新宿東口の黒板に書くとシティーハンターと繋がりが持てる」というのも、腕利きの探偵とのコンタクト方法だと思っていた。殺人者とコンタクトするには、方法がオープンすぎるように思えて、全く疑ったことがなかった。でも、連載当時には、インターネットや携帯電話というのはまだ一般的ではなかっただろうし、新宿や歌舞伎町も今とは違うものだったんだろう。

それにしても、巻末の読者からの手紙紹介で、 十二、三歳の女の子たちが、主人公に熱烈なラブレターを綴っているのには、ほほえましいような時代を感じるような、いつの時代も同じなような。当時で、少女だからこそ、そういう手紙を送ることができてしまうのだろうと思うと、その感じが懐かしくも羨ましくもある。「リョウ様にわたしの名前を呼んでほしい、ささやいてほしい」とか少女たちが言っているのには、ちょっと照れてしまいました。

今、ドラマ『池袋ウエストゲートパーク』を見返すと、池袋を知る前にはドラマのために用意されたファンタジーだと思っていた部分の多くが、当時の池袋そのもので出来ていたのだろうことに気づいて驚く。池袋という架空の街を一からでっちあげたのではなく、そのままの街の力を使った作品だったんだと気づかされる。

支離滅裂になってきたのでこのあたりで。

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